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第11部「ボーガンの女」

11部 ボーガンの女

浜辺  末平・山波・川道   11時33分
ーーー3人は泳いでいた。
3人共服を脱がず、そのまんま水の中に入っていた。
しばらくして、末平が5mぐらいの高さの崖に登る。
「行くぞぉーー」
「おぉ!いも(末平)、飛べ!」
山波が呷る。
「行け行けぇー!!」
川道も一緒になって騒ぐ。
末平は足から水に向かって飛ぶ。
水は深く、3~4m程あった。
「・・・・・プハァッ」
水から顔を出す末平に2人も泳ぎ寄る。
「すげぇ、勇気ありだね」
「かっけぇわ」
3人は談笑をする。
友の死は苦しい・・・が、いつまでも悔やんではいられない。
苦しみを紛らわすには、遊ぶのが1番・・・3人はそう考えた。
ーーー3人にとって、大切なものは金よりも信じあえる友だったーーー

『バシャーン』

遠くで水中に何かが落ちる音がした。
しかしその音は3人の楽しそうな声にかき消され、気にもされなかった。
今、山波らがいるところは深さが3mはあるだろう。
水の底を生き物が通ったとしても、誰も気付かない・・・気づけないだろう。
「あ・・・・あそこにボールがある!!」
「俺取ってくるょ」
川道は泳いで陸に上がり、50m程先にあるボールへと走っていった。
「ふぅ・・・・・」
「・・・・・・」
2人は静かになり、川道を待つ。
そこの島には、自分達以外はいない、自分達が静かになれば、音はない。
空気と、波の音しかしなかった。
『・・・・・ーーーチャポ』
2人の後方の水が揺れた。
末平はその音に気付き、後ろを向く。
山波は・・・・その末平の警告とも呼べる行動に気付く事ができなかったーーー
「!!!!」
末平の後方には、人がいた。
水面には鼻から上しか出していない人がいた。
末平は気づけた・・・・けど、少し遅かった。
『バシュ、バシュ』
その"人"の持つボーガンから放たれた2発の矢は、水中から末平へと向かった。
1本は左ふくらはぎ、もう1本は喉を貫いた。
「・・・・?」
山波は流石にボーガンの音には気付き後ろを向く。
・・・・しかし、そこには何も見当たらない。
「・・・・・・」
山波は川道の方を向くために振り返る。
しかし、ふと目が止まった。
・・・・山波の回りの水が赤く染まっていくのが、分かった。
「!?」
すぐに末平の方を向く。
・・・・・そこには背中と後頭部しか見えなくなって浮いている末平の姿があった。
"それ"の首の後ろから血で赤く染まった矢が突き出ていた。
『ーーー水の中に誰かいるーー』
山並がそう思うのに時間は必要無かった。

「・・・おしっ、ちゃんと空気入ってんな」
ボールを拾い笑顔で山並達の方を見る。
山並は
『川道に助けを求めなきゃ』
なんて気持ちはもう失せていた。
『川道を生きさせよう』
そう思えた。
・・・・山並は、自然にそう思えたのが少し嬉しかった。
「逃げろぉ-ーーーーーーーー!!!!!!!!」
気付いたら・・・そう、叫んでいた。
「!!!!・・・・な、何ぃ!?どういう事!?」
『パサッ』
ボールが川道の手から浜辺に落ちた。
『ーーーーチャポ』
そいつは顔を鼻まで出し、水中でボーガンを構えた。
『バシュ、バシュ、バシュ、バシュ』
・・・・4発だった。
全て山並の上半身を射抜く。
山並の流れ出る血と共に、泳ぐ力がどんどん抜けていった。
山並は沈んでいったーー
目の前が霞んでいった
・・・・しかし、沈む途中そいつの顔を見る事ぐらいは出来た。
『・・・・・ちぇっ・・・女かょ・・・・なんだょ・・・恨みか・・・・ょ・・・』
『バシュ、バシュ、バシュ』
・・・・トドメだった。
矢は、右まぶたと左頬とアゴを貫いた。
山並に痛がってる余裕も無い。
ーーーー早く・・・死にたかった・・・・ーーー

女は笑顔を浮かべてあげた、惨めな男2人に・・・優しい笑顔をあげた・・・

「ど、どぅしたんだょ・・・・なぁ、山な・・・・み?」
山並が沈んでいくのが見えた。
「・・・・・・あ・・・あぁ・・・・」

『逃げろぉーーーー!!』

その言葉が過った。
川道は、山並を信じれた。
『・・・ご、ゴメン・・・!!』
川道は自分も合わして3人分のバッグを持って走っていったーーー

『スゥ-ーー』
女は陸に上がる。
「・・・・ちぇー、1人逃がしちゃった・・・・まぁ良いや、山並殺せたし、許してね、2人共?」
笑った、歯を見せて笑った。嬉しそうに・・・笑った
「ンフフ」







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